
理想郷(前編) Et in Arcadia Ego, Part 1
by Amazon
スタートレック:ピカード S1-9 ストーリー
ピカード一行が乗るラ・シレーナ号は特殊なワープゲートを通りソージの故郷コッペリウスへ到着。しかし追ってきたナレクと惑星軌道上で戦闘になります。
ドッグファイトを繰り広げる中、セブンの操るボーグキューブも突如ワープゲートから出現します。
その時コッペリウスから蘭の花のような兵器が飛んできてそれぞれの動力を奪います。
ラ・シレーナ号はなんとか惑星に不時着。
その途中でピカードは病が悪化し意識不明に陥ってしまいます。
ピカードは自分の不治の病の状況を告げショックを受ける一同。
その後一行はかつてソージが住んでいた入植地に向けて出発します。
途中、墜落したボーグキューブに行きエルノア、セブンと再開。
ピカードは2人には生き残ったボーグ達と協力してボーグキューブを復旧させる事を頼みます。
コッペリウスの集落に着くと、そこは人工生命体達が穏やかな暮らしを送る場所でした。
一同のリーダー格のアンドロイドでソージの事を知っていたアルカナ、かつてデータを作ったヌニエン・スン博士の息子アルタン、そして外見がソージと似ていて何処か妖しさを漂わせるスートラと交流。
スートラは精神融合でアグネスから彼女がオウ准将に見せられた「警告」と呼ばれる地獄絵図のビジョンを共有します。
ビジョンを共有してそこから情報を得たスートラは妖しく佇むのでした。
一方不時着していたナレクはシンス達に捕まり監禁されます。
アルカナが見張りに付きますが優しい心の持ち主の彼女はナレクの甘言に騙されそうになります。そこへソージがやってきてアルカナにナレクの言うことを信じないように警告。
入れ替わりにスートラがやってきてアルカナと見張りを交代しますが、
スートラはナレクを牢から出す提案をする代わりにある協力条件を伝えます。
ボーグキューブの長距離スキャンによりコッペリウス襲撃にやってくるロミュラン艦隊は200隻以上と判明。
猶予は2日ほどしかありません。
ピカードはラ・シレーナ号を修理してコッペリウスに住む住民を全員避難させる策を進めます。そして手を打つため宇宙艦隊に通信を試みますが繋がりません。
一方アグネスはアルタンと一緒にマドックスについて語らう中、アルタンが現在制作中の特別なアンドロイドのボディを見せられます。
アルタンはアンドロイドのボディへの精神転写はまだ未完成であり、そこはマドックスの担当だったこと、それをアグネスに手伝うように提案。アグネスは引き受けます。
ナレクを閉じ込めていた牢のそばでアルカナが殺害されて見つかり、ナレクの姿はありません。アルタンは嘆き悲しみます。
コッペリウスでは迫りくるロミュラン艦隊に対してどう対応するかの話し合いが持たれます。
会議を仕切るのはスートラ。
彼女はアグネスを経由して見たビジョンを解読し、あれは警告ではなく、より高度な人工生命体から進化過程の人工生命体へのメッセージであることを読み取っていました。
スートラはアルタンと協力してその高度人工生命体を呼び出す通信信号をすでに製作済み、ピカードの脱出・移住案を却下して高度人工生命体の力を借りて宇宙の有機生命体を滅ぼして人工生命体が生き残る道を取ると決定します。
ピカードはそれに猛反発し人工生命体達を説得しますが、スートラはもちろん、アルタン、そしてソージも味方せずアグネスも半ばアンドロイド側に付きます。
結局他の誰の賛同も得られず、ピカードは監禁されてしまうのでした。
宇宙空間ではロミュラン艦隊がコッペリウスまで残り24時間の地点まで迫っていました。
その旗艦のブリッジには指揮を取るロミュランの将としてオウの姿がありました。
第9話 理想郷(前編)の疑問
アンドロイドへの精神転写はTNGで確立されていたはずですが…
アルタンは精神転写はまだなんだよと言うことをアグネスに語ります。
しかし、人体からアンドロイドへの精神転写はすでに新スタートレック(TNG)32話の「コンピュータになった男」のエピソードで成功済みです。
宇宙暦の時間軸で30年ほど前に成功済みなのに、なぜアルタンは精神転写ができなかったのでしょうか。
アルカナを殺したのは誰なのか?
ナレクを見張っていたアルカナが殺され、その目にはアルカナのアクセサリーが刺さっていました。
そのまま素直に読み取ればアルカナを殺したのはナレクになりそうですが、果たして本当にそうでしょうか?
アルカナは直せないのか?
アルカナは目を突き刺されて死んでしまったようで、アルタンはとても悲しみます。
ですが、完全に破壊されたわけではなく体の95%近く(推測)は無傷に見えます。
アルタンはアルカナを直してあげれば良いのではないでしょうか。
高度人工生命体を呼べばアルタン自身も殺害の対象になるのになぜ賛成したのか
ピカードの説得に対してアルタンは積極的に全否定を行い、あまつさえアンドロイド達がピカードの言うことを聞かないように誘導さえしています。
一方で、その前にスートラの演説により有機生命体は皆殺しになることが示唆されており、その対象にはもちろんアルタン自身も含まれるはずです。
自分も殺害対象になるのになぜアルタンはスートラ側についたのでしょうか。
スートラはかつてのロアのように悪の心があるのか
本エピソードで出てくるダージにそっくりなアンドロイド、スートラ(実際には過去にリオスが出会ったジャナの姉妹)。
なんの躊躇いもなく有機生命体抹殺論をぶち上げ、更にナレクに対しても含みがあるように接触する姿は、同じシンスのアルカナのような素直な心の持ち主には見えません。
彼女にはかつて登場したデータの兄弟ロアのように悪の心が宿っているのでしょうか?
第9話 理想郷(前編)の疑問への考察
データのポジトロニックブレインがあってこその精神転写だった
TNG32話「コンピュータになった男」で登場したスン博士の師匠であるアイラ博士は自分の死期が近いことを悟り、データの隙きを突いて自分の精神をそっくりそのままデータに移し、データの肉体を乗っ取り好き勝手放題やるということをやってのけました。
本作、「ピカード」時間軸の30年ほど前にそれをやっているわけです。
なのにそれよりテクノロジーの進んだ現在のアルタンはそれすらできていない。
最初は「アルタン無能説」(失礼)も考えてみましたが、それだとあんまりなので他の可能性も考察してみました。
そこで私はアイラ博士の精神転写はデータのポジトロニックブレインがあってこそ成り立ったのではないか?と考えました。
あのエピソードでは転写後にデータの自我とアイラ博士の自我がしばらく争っており、
その後アイラ博士が勝ってデータを乗っ取るわけですが、
つまり事前にデータの自我があってこそ成り立つ精神転写だったと言えるかもしれません。
なので最初にまだ自我が入っていないアルタンのアンドロイド・ボディへの転写はできないのではないかと。
それにアイラ博士の場合はすでに死期が近かったので、もう破れかぶれで一か八か転写を行ったらたまたま成功したというだけかもしれません。
なのでアルタンが無能というわけではないと思います(たぶん)。
が、アイラ博士はその後、データを解放して自らはエンタープライズのコンピュータの中に移るという離れ業もやってのけました。
…やはりアルタンに比べるとアイラ博士が際立って優秀なのかもしれません。
アルカナを殺したのはスートラ説
スートラがナレクと密談する前にナレクがアルカナのアクセサリーを見つめて狙うシーンが描かれていました。
んで、そのアクセサリーが刺さってアルカナが死んでいたので、ナレクが殺したというのが有力に思えますが、私はあえてスートラがアルカナを殺した説を提唱したいと思います。
アルカナは素直なアンドロイドなのでおそらくソージが告げたナレクを信じるなという教えは守ったと思います。
ナレクとソージのどっちの言うことを聞くかと考えるとそりゃ友達のソージの方でしょう。
なのでおそらく牢も開けなかった。
となるとナレクが牢から出てアルカナを殺すのは難しそうです。
もう一つナレクが殺していない説の根拠として、アルカナは目の部分を突き刺されて亡くなっていました。他の部分に外傷は見当たりません。
あの場所がピンポイントでアンドロイドに致命傷を与えるポイントであるとナレクが分かるとは思えません。
あそこが弱点であると知っているのはアンドロイドの構造に詳しいものであると推測します。
ということからスートラが殺した説に繋がります。
スートラはナレクとの密談シーンからもおそらく目的のために手段を選ばないタイプと思われます。
ですのでスートラがアルカナを殺し、その罪はナレクに擦り付けてナレクを逃がす。
こうやって有機生命体に対する仲間のヘイトを煽るためにアルカナとナレクの両方を利用したのではないかと予想します。
あくまでマドックスが凄いのであってアルタンは…説
アルカナが破壊されたシーン、
私は見てて、それくらいの傷なら直してあげればいいじゃないと思いました。
でもアルタンは嘆き悲しむばかりで無理なように映ります。
…となるとアンドロイドを作ったのは主にマドックスであって、実はアルタンは作れないのかもしれません。
そうなるとまたアルタン無能説に戻ってしまうのですが…。
子供を守るアルタンなりの親心だった
ピカードを全否定してスートラの有機生命体抹殺プランに率先して乗るアルタン。
自分も殺される側だというのに賛成した理由として私は、
自分の子供達であるアンドロイドを守ることを優先した親心からなのではないかと思いました。
この親心云々についてはスートラがアグネスに対しても説いていますので、その写し鏡になったなった演出なのだろうと思います。
もう一つ飛躍した考察として、実はアルタンもアンドロイド説も考えてみました。
実は自分もアンドロイドなのでスートラの有機生命体撲滅プランの対象には入っておらず、率先してスートラに賛同した―というものです。
これであれば、人間の精神がうまく理解できないので精神転写ができない―という事にも繋がりそうです。
またスン博士の「息子」というのがスン博士が作ったんだから子供のようなもの―という意味で捉えれば息子のアンドロイドという事もできそうです。
ですが、ここはきれいに親心説にしておきたいと思います。
スートラよりソージの方がよほど悪人の恩知らずに見える
本エピソードでスートラはさも悪の心があって目的のために手段を選ばないように描かれています。かつてTNGで暴れまわったデータの兄弟ロアを彷彿させんばかりの所業です。
しかし一歩引いてアンドロイド側の立場に立って考えてみると、スートラはそこまで悪でも無いような気がします。
自分たちを滅ぼそうとするロミュランと同じ有機生命体である、惑星連邦を信じる義理など無いですし、そもそも連邦が出したシンス禁止令が自分たちを滅ぼそうとしてるのと同じというのは言われてみればごもっとも。理にかなってます。論理的です。
なにより自分たちが生き残る事を優先して何が悪いのでしょうか。
実際そうやって人類は現実世界でも他の生き物を平気で滅ぼし、白人は有色人種をまるで人間では無いかのように迫害して歴史を紡いできているではありませんか。
私はむしろ、最後の最後でピカード監禁プランにあっさり同意したソージの方がよほど悪人に見えました。
ピカードのお陰でキューブから生き延び、自分の故郷まで連れてきてもらったのにそれでもなおピカードの事を信じず、あまつさえ監禁しろと宣う。
これまでの数エピソードを経ても「まるで成長していない…」状態であり、酷い恩知らずに見えてしまいます。
願わくば、実はこのソージの監禁プラン賛同はスートラの目を逸らす為の伏線であって、
本当はピカードを信じていて逆転のプランがある…という流れが今後あってほしいです。
備考
スタートレック:ピカードもいよいよ次でシーズン1最終話。いったいどうなるんでしょうか。
本エピソードの海外向けタイトルである「Et in Arcadia Ego」これは「我アルカディアにもあり」という意味で、ここの「我」とは死であり、つまりアルカディアのような理想郷にも死が潜んでいるんだよという事なのだそうです。
これが本エピソードで亡くなったルカナの事を差しているのか、それともコッペリウス全体の行く末を暗示しているのか最終話が気になります。
もう一つ死といえばピカードの容態が気になります。
私は、最終回でピカードの意識をアルタンが作っていたアンドロイドに移す展開を予想してみました。
9話までやってきて急にピカードの容態がクローズアップされましたし、唐突にアンドロイドへの精神転写云々の話が出てくるなど伏線がモリモリ張ってありますよね。
ただそうなるとピカードは死ぬという展開になりそうで、それはいちジャン=リュック・ピカードファンとしては見たくない気持ちも…。
後、アグネスなんですが、罪を償うと言っておいて、なんだか本エピソードを見るとずっとコッペリウスに残ってそのまま研究しそうな雰囲気です。
アグネスのマドックス殺害は、もちろん操られたが故の事で可哀想なんだけど、罪は罪として償う話はいったいどうなったんだろうと思います。
まさか最終話で死亡離脱とかなんでしょうか…。
それかアグネスの精神をアンドロイドに移せばもう本人じゃないから罪を償なわくて良いという展開もありえそう…
スタートレック:ピカードはかつてのTNGとは異なり、連続ドラマ風な作風になっています。したがって後のエピソードで今回挙げた疑問等が明かされる展開があるかもしれません。
この記事はシリーズをシーズン1-1話から順次視聴し、該当するエピソードを初回視聴した時点で書いていますのでご了承ください。